大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

横浜地方裁判所 平成9年(わ)1097号 判決 1997年8月13日

主文

被告人を懲役二年及び罰金七〇万円に処する。

未決勾留日数中一〇〇日を懲役刑に算入する。

罰金を完納することができないときは五〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

理由

(犯罪事実)

第一  被告人は、中華人民共和国の国籍を有する外国人であるが、平成七年三月二八日、有効な旅券又は乗員手帳を所持しないで、航空機に搭乗して千葉県成田市古込字古込一番地一所在の新東京国際空港第二ターミナルに到着して本邦に入った。

第二  被告人は、A及びBらと共謀の上、大蔵大臣の免許を受けないで、別表記載のとおり、平成九年一月八日ころから同月三〇日ころまでの間、前後九回にわたり、中華人民共和国への送金依頼人である甲ほか八名が、横浜市南区白金町二丁目<番地略>所在の○○ビル四〇一号室ほか五か所から同市神奈川区入江一丁目<番地略>所在のレジデンス××三〇二号に電話をかけるなどして、原則として送金額の0.5パーセントの手数料を被告人らに支払う約束で、送金依頼人の指定する同国福建省福清市内に居住する受取人に対する現金の送付方を依頼した際、これを引き受け、その都度、右各受注に係る送金の受取人名、送金受領先電話番号、送金額等を右レジデンス××三〇二号から右福清布尤田鎮二段四号対面在住のB宛てにファックス送信して右現金の交付方を指示し、右Bらをして、同月九日ころから同月三〇日ころまでの間、前後九回にわたり、右福清市内において、右送金依頼人の指定する受取人に対し、あらかじめ準備しておいた日本円の資金から送金依頼に係る金額合計五二一万円を交付した上、同月一三日ころから同年二月七日ころまでの間、前後九回にわたり、送金依頼人である右甲ほか八名から、被告人らが管理する株式会社三和銀行横浜支店乙名義の口座ほか六口座に送金額と手数料の合計五二三万五七五〇円を振り込み入金させて受領し、業として為替取引を行い、もって銀行業を営んだ。

(証拠)<省略>

なお、弁護人は、第二の行為は銀行法二条にいう為替取引には当たらないので、右事実について被告人は無罪である旨主張するが、同法二条にいう為替取引とは、広く隔地者間における資金の移動を現金の輸送を行わずに実現する仕組みをいうと解されるから、本件行為が為替取引に該当することは明らかである。

弁護人の主張は理由がない。

(法令の適用)

罰条

第一の行為 平成九年法律第四二号による改正前の出入国管理及び難民認定法七〇条一号、三条一項

第二の行為 刑法六〇条、銀行法六一条、四条一項

刑種の選択 第一の罪について懲役刑、第二の罪について懲役刑及び罰金刑

併合罪の処理 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(懲役刑について犯情の重い第二の罪の刑に加重)

未決勾留日数の算入 刑法二一条

労役場留置 刑法一八条

訴訟費用の不負担 刑事訴訟法一八一条一項ただし書

(裁判官鈴木秀行)

別表<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例